清水宇宙生理学研究所について

清水宇宙生理学研究所は諏訪マタニティークリニックの附属研究施設として2003年に開設されました。清水所長は今までの研究を生かし、宇宙研究とセクシュアリティの問題を主題に宇宙環境への人類の適応とその将来について考察を進めており、その過程のひとつとして宇宙環境での生殖生理学と生殖医学を追求しようとしています。現在はその手始めに地上における胎児発達に対する重力の影響を調べてる試みをしています。

清水 強


医療法人登誠会 諏訪マタニティークリニック附属清水宇宙生理学研究所所長
福島県立医科大学名誉教授
生理学者
医学博士
宇宙航空医学認定医

略  歴
1938年 宮城県仙台市で生まれる。1940年以降長野県上田市で育つ。
1963年 信州大学医学部卒。インターンを京都大学医学部附属病院で行う。
1964年 信州大学大学院に入学し生理学を専攻。
1968年 大学院修了。医学博士を授与される。米国イリノイ大学生理学生物物理学教室の研究員となる。
1971年 信州大学医学部生理学第2講座の助手に就任。その後嘱託講師から専任講師に昇任。
1974年 名古屋(現藤田)保健衛生大学医学部第1生理学教室の助教授に就任。
1981年 信州大学医学部生理学第2講座助教授に就任。
1983年 福島県立医科大学医学部生理学第1講座の教授に就任。
2003年 定年退職。諏訪マタニティークリニック附属清水宇宙生理学研究所所長に就任。

現在に至る。
なお、この間、各種専門学校(看護、理学療法・作業療法、臨床検査、栄養、理容美容、柔道整復等)や短期大学の生理学講師(非常勤)も勤め、また、精神科や内科にも非常勤医師として従事した。

所属学会

日本生理学会、日本病態生理学会、日本臨床生理学会、日本Shock学会、日本医学教育学会、日本宇宙生物科学会、日本宇宙航空環境医学会、日本マイクログラビティ応用学会、神経組織の成長・再生・移植研究会、日本自律神経学会、日本体力医学会、福島医学会、信州医学会、The International Society for Gravitational Physiology、他

役  職

日本生理学会評議員、日本病態生理学会理事・評議員、日本臨床生理学会評議員、日本ショック学会功労会員(理事、評議員歴任)、日本宇宙生物科学会評議員(副会長、幹事歴任)日本宇宙航空環境医学会評議員(理事、監事歴任)、(日本栄養・食糧学会参与、東北支部会評議員歴任)、日本体力医学会評議員、福島医学会名誉会員(幹事、評議員歴任)、日本宇宙航空環境医学会東北宇宙生命科科学シンポジウム分科会:会長(平成5〜平成12年度)、第10回日本病態生理学会大会:大会長(平成11年度)、第14回日本宇宙生物科学会大会:大会長(平成12年度)、第26回東北生理談話会:当番幹事(平成5年度)、日本臨床生理学会第5回分子生理研究会:会長(平成13年度)、第36回日本栄養・食糧学会東北支部大会:会長(平成14年度)、第48回日本宇宙航空環境医学会総会:会長(平成14年度)

平成11年度 1999 NASA HONOR AWORD, Group Achievement Award NASA Neurolab Project Team (米国航空宇宙局)
平成17年度 日本宇宙航空環境医学会 学会功労賞
平成18年度 日本宇宙生物科学会 学会功績賞
他各種感謝状

研究内容

大学院では主として循環生理学の研究を行い、血圧の変動における心臓の役割に関する研究で学位を取得。米国イリノイ大学の研究員時代は、消化管ガスの発生機序、特に大豆食との関係の研究を行なう。この間宇宙携行食との出会いもあり、腸内ガス発生との関係に関わる実験も試みた。米国より帰国後の大学教員時代は、主として生理学の教育と研究に携わると共に、循環呼吸の調節機構とその生後発達についての課題を中心に研究を続ける。福島県立医科大学時代にはこれらの研究の延長線上で宇宙医学生理学広くは宇宙生命科学の分野へ研究を拡げる。
本研究所に着任後は、宇宙開発におけるセクシュアリティの問題を主題に宇宙環境への人類の適応とその将来について考察を進めており、その過程のひとつとして宇宙環境での生殖生理と生殖医学を追求しようとしている、現在はその手始めに地上における胎児発達に対する重力の影響を調べている。
従来関心を寄せてきた研究分野ないしは課題を列挙すると、循環呼吸生理学、消化管生理学、自律神経科学、病態生理学、医学教育 ー 医療人教育、宇宙生理学(宇宙生命科学)、宇宙開発とセクシュアリティ ー 生殖生理学、こころの問題 ー うつ病など、等である。
循環呼吸生理学では、循環調節機序(中枢 ー 末梢関連)の解明を目指して、血圧振動の発生機序における心臓の役割、脳阻血圧反応の機序、大動脈神経性圧反射機構、循環調節機構の生後発達及び胎生期変遷、徐脈及び心臓迷走神経の意義、神経性高血圧、動脈硬化、等を追求してきた。また、循環呼吸相関を調べるために、無呼吸やあえぎ呼吸(gasping)、息こらえ時脈拍変化などに注目した。
消化管生理学では、主に消化管内ガスの発生機序を研究し、食物とガス発生、特に大豆のガス発生因子を追求し、腸内細菌による腐敗と醗酵に基づくガス産生機序を調べた。
宇宙医学生理学では、アポロ計画の宇宙携行食と消化管ガスについて試験管内単発実験の経験もあるが、主に微小重力下における循環調節機構とその生後発達の問題に取り組み、 微小重力下の体液移動の模擬状態をつくる頭部低位傾斜実験(HDT)、短時間微小重力を催起する航空機の放物線飛行実験(PF) 、地球周回軌道上での微小重力環境を形成するスペースシャトル実験などを行って新たな知見を得た。1993年NASAとNIHを中心に企画された脳神経の宇宙実験Neurolab計画の主任研究者として応募し、採択された26課題の一つとして提案課題が採用され、1998年スペースシャトルコロンビアでラットを用いて血圧の反射性調節機構の生後発達に対する微小重力の影響を調べる実験を行ない、幾つかの新事実を見いだした。2003年の帰還時爆発炎上した悲劇のコロンビア号でも実験にも共同研究者として参加した。その一方で現在は宇宙環境での人間社会形成とセクシュアリティの問題について、提言をし、幾つかのワーキンググループ(宇宙農業、宇宙での継世代、宇宙での哺乳類を用いた動物実験、重力と人間活動等)に参加しながら考察を重ねている。そのひとつとして宇宙環境での生殖活動(生殖細胞の発達から保育迄)と生殖医療について検討し、例えば、微小重力下での母乳保育行動の考察なども行っている。 また、地球上での生体に対する重力の影響を多方面から改めて考えようと試みている。目下手始めに重力の胎児発達への影響についての実験観察を行っている。
医学教育の研究は医学生や医療関係者の教育に関する諸問題について考案を重ね、よりよい医療人の育成を目指した。日本医学教育学会会員として第6回大会からほぼ毎回参加し、発表を続けてきた。例えば、入試制度、教養(医学進学)課程の問題、生理学教育の問題、評価法、実習や実験教育のこと、講義の問題点、落第(留年)問題、教育技法、学生の意識調査、教員の考え方や意識、卒後-生涯教育、援助者(技術員)の役割、基礎医学配属(研修)コースの検討、医師数-医学生定員問題、患者の医師への要望、医師のあり方、医学教育への宇宙医学生理学導入等々である。


提供 NASA