当院の治療指針
当院では、スタッフ一同、以下の点を治療目標、不妊症専門病院としての目標としています。
1.なるべく早く、かつ無理のない治療方法で、妊娠していただくこと。
2.不妊症治療の最終病院となること。
3.1度のトライアルで治療を受けた方すべてが妊娠するわけではありません。たとえ失敗に終わったとしても、次回もまた来院して、治療を受けていただける病院となり、そして、当院を信頼して治療を受けていただいた10人が10人とも子供を連れて家に帰れるようになること。
当院では、腹腔鏡や子宮鏡を含めたあらゆる検査方法、開腹手術、腹腔鏡下手術、マイクロサージェリー、GIFT、体外受精、顕微授精、精巣上体精子吸引術、精巣精子回収術を含めたあらゆる治療方法をおこなっています。医学的に認められないときにはその限りではありませんが、患者さんの希望にあわせて検査方法、治療方法を考えていきます(AID(非配偶者間人工授精)は行っておりません、必要な患者さんはAIDを行っている病院を紹介いたします)。
不妊症の治療は患者さんの意志に大きく作用されます。子供をほしいとは思っていても病院に通ってまではほしくないと考えている方々も多いと思います。また、病院に通ってふつうの検査でできればいいという方もいるし、中には自分にどんな肉体的な侵襲が加わっても妊娠したいという方もいます。人それぞれです。医療というものはすべてそうですが、患者さんに希望のない医療行為は行えません。しかしまた、患者さんの希望があるからといって、医学的な適応がないのにより高度な医療をおこなうことも間違いです。医学的な適応のもとで患者さんの希望に添った治療をおこなっていくことが適切な医療だと思います。不妊症治療においてはよりそれが鮮明になります。より簡単な治療方法で妊娠するのならそれにこしたことはありません。しかし高度な治療法でしか妊娠しない人にその治療の希望があった際には、躊躇はあってはならないと思います。
不妊症の治療のゴールは、一つには赤ちゃんが産まれること、赤ちゃんを抱いて家に帰ることができることですが、一方で子供をあきらめるというものも一つのゴールとなります。60歳や70歳になっても夫婦だけで仲良く暮らしている方もたくさんいます。養子をもらうというのもまた一つの選択肢です。子供だけがすべてではありません。昨今の少年犯罪は、子供により親の社会的生命をたたれているよい例だと思います。再度述べますが、子供だけがすべてではありません。しかし、患者さんに子供をもちたいという希望がある限りは、なるべく治療は短期間におわるように全力で取り組むことが担当医のつとめだと考えております。子供がほしいと希望されて来院される患者さんは、妊娠することが目的ではありますが、なぜ子供がほしいと思われるかと考えると、子供をつくることが目標ではなく、子供を育て、共有の時間をもち、子供との共有の歴史を自身の人生において刻むことこそが目標であると思います。この意味で考えると、子供が産まれて初めて本来の目的はスタートをきれます。不妊症の治療を行っている期間はその患者さんにとっては確かに貴重な時間です。しかし目標としている人生全体から見れば、不毛な無駄な時間になってしまいます。10年で子供ができた人がいたら本当におめでとうございますと言います。しかし10年でできる方は5年でできればいい、あとの5年は子供との生活に使っていただければいいと考えます。5年でできる人は2年で、2年でできる人は1年でできればいいと思います。生殖に適した期間はそう長いものではありません。妊娠するまでに人生を消耗させ疲弊させてしまうのは、治療を担当するものにとっても大変不本意なことです。なるべく短い期間で無理のない治療で妊娠していただくことが最大の目標です。
また上述のように当院ではあらゆる検査方法、あらゆる治療方法をおこなっております。不妊症治療の最終病院となることも大きな目標です。しかし、不妊症治療を受けられた方はよくわかっていると思いますが一度の治療ですぐに妊娠するものではありません。一度治療に失敗してもこの病院ならとトータルな意味でまた治療を受けようと患者さんに思っていただけるような病院づくりを心がけております。また、最終的には当院を信頼して治療を受けていただいた患者さんのすべてが、妊娠し赤ちゃんを抱いて家に帰ることができるように努力していきたいと考えております。
不妊症というと、いままで女性の病気と考えられる傾向がありましたが、不妊症の約50%は男性に原因があります。妊娠という現象は、女性よりの卵子と男性よりの精子が結びついて初めて成立するものです。検査治療には御主人も積極的に参加していただくようにしております。