大阪高裁の多胎一部救胎手術(減胎手術)に関する裁判に関し
本日12月17日大阪高裁にて、多胎一部救胎手術(減胎手術)に関する裁判の判決が出されます。
根津院長に関する裁判ではありませんが、今回の控訴人である患者さんの最後の主治医となった関係上、証人として関わりました。
また、長年、多胎一部救胎手術の法的な位置付けと公的な医療ガイドラインを求めて問題提起をしてきた医師として、メディアの方々から問い合わせがありましたので、こちらに手術や手術をめぐる問題に関する情報を掲載いたします。
裁判内容に関しては、担当弁護士(フェアネス法律事務所)にお問い合わせください。
*減胎手術とは、自然に、又は不妊治療の結果、多胎妊娠となった母親に、妊娠22週未満において胎児数を減らし、母子共に安全に妊娠経過させ出産に至らせる方法
(一般的に、減胎手術、減数手術と呼ばれており、以前は当院においても減胎手術と呼んできましたが、一人でもこの世に安全に誕生するために行う施術のため、「多胎一部救胎手術」と呼ぶことを、近年提案しています)
根津院長コメント
長年、多胎一部救胎手術の法的な位置付けと公的なガイドラインづくりを求めて問題提起をし続けてきた医師として、今回のケースは、患者さんにとっての医療行為としてはあまりにも悲しい結果であったと捉えています。しかし、これは一医師の問題にとどまらず、この国で公的なガイドラインが作られないまま長年放置されつづけたことによって、このような考え難い事態が起こってしまった、とも言え、今回程では無いにせよ、マイナートラブルはかなり存在しているのではないかと思っています。
問題提起当初より訴え続けてきていることですが、多胎一部救胎手術を安易に希望なさる患者さんはおられません。多くの患者さんは妊娠の喜びもつかの間、多胎妊娠の事実に驚き、苦渋の果てに手術を選択し、受けて行かれます。その度に、多胎妊娠が起こらないことを願いつつも、起こってしまった場合には担当された産婦人科医が患者さんの意向の下に手術を含む適切な指導と対応ができる体制作りを望まずにはおられません。
私が多胎一部救胎手術の実施を公表してから35年目に入りました。全国から当施設を訪れ手術を受けられたご夫婦は本日現在1,397組となり多くの命が誕生していますが、未だに多胎妊娠となり担当医に見放され、紹介状も持たずに自力で当院を調べて辿りつく患者さんが後を絶ちません。
どんなに努力しても多胎妊娠を皆無にすることはできません。産婦人科医の集団である日本産科婦人科医会や日本産科婦人科医会には、一刻も早く公の医療ガイドラインを作成し、安全な施術の普及、実態把握に尽力していただきたいと思います。また法改正もしくは通達等で、明確に法的な位置づけが国によってなされなければ、医療者も患者も安心して施術に臨むことなどできないのです。
法的にも医療的にも公なルールが整備されることを、改めて強く、強く望みます。